
■新しい風
──心の中で、何かが少しだけ変わった気がした。
その日は、少し早めにデスクに向かっていた。
部屋の隅に飾られた絵が、いつもより鮮やかに見えた。
昨日のカウンセリングから一晩が過ぎ、心の中にあった不安や迷いが、少しずつ薄れていったように感じる。
「風が吹いた。」
それは、あの日、カウンセラーからもらった言葉だった。
まるで、遠くで起きていた嵐が収まり、静かな朝が訪れたような感じがした。
ゆっくりとコーヒーを飲みながら、ノートパソコンを開く。
その画面には、これまでの仕事の課題や数字が並んでいる。
けれど、今日はそれが以前ほど怖くない。
(大丈夫、焦る必要はない。)
自分の中で、そんな確信が芽生えた。
目の前の壁は高いけれど、それを乗り越える力が自分にはあると、
初めて心から感じたのだった。
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■チームとの一歩
仕事が始まり、いつものようにGoogle Meetを立ち上げると、
メンバーたちの顔が次々と並ぶ。
今日は、少しだけいつもと違う気がする。
彼女たちの顔が、少し優しく見えるような気がした。
「Aさん、昨日のアドバイス、すごく参考になりました!」
Yが嬉しそうに言った。
その言葉に、思わず笑顔を浮かべた。
少し前なら、Yの言葉をあまりにも重く感じていたかもしれない。
けれど今は、その一言が心に響いた。
「ありがとう。あなたの力があってこその成果だよ。」
こうして、少しずつ、自分の中の不安を解消していく。
自分を責めず、前に進むことを選んだその結果が、確実にチームに良い影響を与えていた。
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■その先に見えた光
午後、ふと窓の外を見た。
夕焼けの空が、少しずつ色づいていく。
あの「風」が、今すべてを変えようとしているのを感じる。
(私、これからどうなっていくんだろう。)
その問いに対する答えは、まだはっきりとは分からない。
けれど、もう恐れることはない。
何かが確かに、動き始めている。
自分の内側から、そして外側から。
翌日の朝、またカウンセリングの日を迎えた。
心の中で静かに準備をし、画面越しにカウンセラーと向き合った。
「Aさん、どうでしたか?」
いつもの優しい声。
その声には、どこか温かさと安心感があった。
「最近、自分に対する考え方が少し変わった気がします。」
素直にそう言った。
カウンセラーは、微笑みながら頷いた。
「それは、とても大切な一歩です。Aさんが感じているその変化、きっと大きな成長に繋がりますよ。」
その言葉を聞いた瞬間、心の中で何かが弾けた。
変わることが怖いのではなく、変わることができる自分に対して、少しだけ誇りを持ってもいいんだと気づけたからだ。
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■新たな一歩
その日、再びYに声をかけた。
「ありがとう。あなたのおかげで、私も少し成長できた気がする。」
Yは驚いた顔をしながらも、笑顔を返してくれた。
「Aさんがいてくれるからこそ、私も頑張れるんです。」
その言葉に、自分がどれだけ多くの人に支えられているのかを改めて感じた。
そして、その瞬間、心の中で確かに決めた。
「私は、これからも前を向いて進む。」
不安はまだ消えていない。
でも、それは今や恐れるものではなく、挑戦する力に変わった。
自分の「風」を信じて、新たな一歩を踏み出せた。
—
完