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「占い通りに動いたら売上1位に!?」-フォーチュン×ビジネスの奇跡-  第1話:「迷いの渦、光の糸」

「占い通りに動いたら売上1位に!?」-フォーチュン×ビジネスの奇跡-  第1話:「迷いの渦、光の糸」

■届かない数字

──また、届かない。

チャットツールに浮かんだ、売上速報の冷たい文字列。
目標未達、、。
その事実だけが、静かに胸に沈んでいく。

そっとマグカップを手に取った。冷めたコーヒー。
口に運ぶ気にもなれず、そのまま机の隅に置いた。


自宅の書斎、窓の外は曇天。

息子が学校に出かけてからの、限られた数時間。

35歳、小学3年生の息子を育てながら、自宅でテレマーケティングに従事する日々を過ごしている。


社会人として、母としてのやりがいを感じながらも、これらの“責任”に押し潰されそうになっていた…。

先月、私は念願叶ってトレーナーへと昇格した。
リーダーから笑顔で報告を受けた時は、嬉しくて涙が込み上げてきた。

今までの自分の努力が認められた気がして、誇らしくもあったが、それと同時に胸の奥には不安もあった。


チームを背負う重み、メンバーの育成、それと並行しながら自分も成長しなければという焦り。

本当に自分はチームリーダーとしてやっていけるのか?

支えるために、まず結果を出さなければ。
でも、支えなければ、チームは育たない。

ジレンマ。葛藤。焦燥。
そして、自責。

(どうしたら、いいんだろう……)

誰にも聞けない。誰にも言えない。
そんな想いが、胸の奥に、静かに沈んでいく。

■一件の通知

夜。息子との食事を終え、洗い物を終えた後

リビングで宿題に励む息子の背中を眺めながら、一息ついていた。

その時、不意に鳴ったチャット通知の音。控えめな“ピコン”が、静寂をひとすじ破った。

──【お知らせ】明日10:30〜 Aさんの占いカウンセリング予定です。

「あ……順番、来たんだ。」

月に一度、順番に回ってくる占いカウンセリング。
六星占術、四柱推命。

会社の一風変わったユニークな福利厚生の1つだ。

初めて受けた時は半信半疑で受けたのを今でも覚えている。

「こんなので変わるわけがない・・・」

そう思っていたが、でも、実際は違った。

私が今抱えている悩みを親身になって聞いてくれるだけでなく、性格、得意なこと、私自身の強みを活かした働き方を丁寧に教えてくれたのだ。

その時、なんとなくだけど霧が晴れた気がした。

(今回も、何か見えるだろうか)

明日のことを考えると、妙に胸が高鳴った。

■画面の向こうの声

翌朝、息子を送り出し、ひととおりの家事を済ませた後
ノートパソコンの前に座り、10時からの業務に向けて準備を整える。


10時からの部内での朝礼を終えて、
10時30分、占いカウンセリング。
画面がつながる。

「こんにちは、Aさん。今月もよろしくお願いします。」

いつもの、やわらかな声。
優しく微笑むカウンセラーの顔。

変わらない声色に、呼吸が少しだけ深くなる。

「最近は、どうですか?」

静かな問いかけ。
私は、視線を少し落としたまま、口を開いた。

「……後輩の育成と、自分の数字。その両方に追われていて……。
支えたいのに、結果を出せていないと、自信が持てなくて。」

言葉を重ねるごとに、心が少しずつほどけていく。
口に出して初めて、自分がどれだけ抱えていたかに気づく。

「焦ってばかりで……気持ちが置いてきぼりです。」

カウンセラーは黙って頷き、手元のチャートを見つめていた。
沈黙のあと、やわらかく語り始める。

「Aさんは、“木”の性質がとても強い方ですね。根を張り、周囲を支える。
しなやかで、折れにくい。でも……今は、“水”の気が満ちる時期。
どれだけ根を張っても、土が流されるように感じやすい季節なんです。」

静かに、胸に染みていく言葉。
的確で、やさしい。
心の奥をすくい取るような語り口。

「今、必要なのは“手放す”ことです。力で支えるのではなく、流れに任せてみること。そして……“土”の気を持つ誰かとの縁が、Aさんにとっての光になるかもしれません。」

──Yさん。

自然と浮かんだ名前。
まだ新人。でも、誠実で、まっすぐ。
その姿勢に、何度も心を動かされてきた。

「彼女は、Aさんととても相性が良いですね。試しに、ひとつ任せてみてください。」

画面の向こうで、カウンセラーがそっと微笑んだ。
その笑顔に背中を押されるように、Aさんは小さく頷いた。

心の中で、何かが少しだけ、動いた気がした。

■小さな一歩

「ただいま」の声とともに、息子が帰ってくる。
ランドセルを投げ出し、テーブルに宿題を広げるその姿。
日常の風景。

その隣室で、私は静かにチャットツールを開いた。
指が迷いながらも、自然と動く。

──「Yさん、もしよかったら、この案件をお願いできる?」

送信ボタンを押したあと、胸の奥にふわりと浮かぶ温度。
あたたかい何か。

名付けるには、まだ早い。
でも、たしかにそこにある感覚。

窓の外、夕暮れの空。
うっすらとオレンジが滲む、雲の輪郭。

変わるかもしれない。
ゆっくり、ゆっくりと。

そんな予感が、心の隅でそっと灯っていた。

(つづく)

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