
Meetの向こうに見えた、あたたかな輪
朝。
パソコンの電源を入れる音が、静かな部屋に響く。
Meetを立ち上げると、
画面の中に、昨日と同じ顔が並んでいた。
「おはようございます!」
声が飛び交う。
笑顔が、あいさつが、光のように交差していく。
まだ馴染めない。
でも、その輪の中に、自分の居場所が少しずつ滲んでいく。
それが うれしかった。
—
架電リスト、ひとつずつ、積み上げる
PCの架電ツールに、リストが表示される。
カーソルを合わせる。クリック。
電話が鳴る。
今日もまた、営業の言葉を届ける。
受話器の向こうに広がる、見えない世界。
優しい声。冷たい声。
途中で切られる音。
無言のまま切れる音。
それでも、
一件ずつ、積み上げていくしかない。
-私にできることは、いまここにあること。
—
Meetの向こうから聞こえる、静かなエール
通話が終わるたび、Meetの画面に戻る。
ミュート越しに見える、誰かの口の動き。
誰かの肩の揺れ。
みんなも、今、戦っているんだ。
画面の横に流れる、メンバーのチャット。
「このアプローチで見込み作れました!」
「おめでとう!もう一息!がんばろう!」
ミュートの向こう。
声は聞こえない。
でも、たしかにそこにある、静かなエール。
その見えないやさしさが、
胸の奥で、そっと支えになった。
—
小さな「できた」が、積み重なる日
一日の終わり。
今日かけた件数、アポの獲得数、改善点。
振り返りの時間。
リーダーが、声をかけてくれる。
「昨日よりも、すごく落ち着いてたね」
「トークにリズムが出てきたよ」
ふわり。
心の奥で、何かがほどける感覚。
-昨日の自分より、少しだけ前へ。
その小さな「できた」が、
私を次へと進めてくれる。
—
画面越しの誰かに、背中を押される
画面に映る、仲間たち。
それぞれの部屋。それぞれの空気感。
でも、ひとつのチーム。
「今日もおつかれさま」
「明日もよろしくね」
その言葉が、心にふわっと灯る。
孤独じゃない。
ひとりじゃない。
たとえ家の一室で、
たったひとり机に向かっていても。
画面の向こうには、
仲間がいる。
それだけで、
心が、少しだけ強くなった。
—
そっと、目を閉じる夜
パソコンを閉じたあと、
部屋の明かりを落とす。
窓の外に、
星がひとつ、またひとつ。
今日もよくがんばった。
そんなふうに、自分にそっと言ってみる。
昨日よりも少しだけ長く、
背筋を伸ばしていられた一日。
「まだまだだな」
そう思う自分も、
「でも、ここまで来たね」
と笑う自分もいる。
どちらも、
今の私だ。
—
積み重ねた一歩の先へ
もう、スパイクは履かない。
でも、私はまた走りはじめた。
画面越しの仲間たちと、
一歩ずつ、同じ方向を向いて。
遅れてもいい。
転んでもいい。
大丈夫。
立ち上がれば、また前に進める。そう信じられた、
今日という一日だった。